【収入の壁】扶養を外れた場合どうなる?

 はじめに「収入の壁」のおさらいです。

  • 税金の壁:住民税110万円、所得税123万円、配偶者特別控除の満額160万円(その後〜約201.6万円まで段階的に減額)
  • 社会保険の壁
    • 週20時間(※106万円の賃金要件は撤廃に向け移行中)
    • 130万円(会社員の健康保険の「被扶養」判定ライン)

ポイント
・130万円は会社員の健康保険の家族に関する線引き。
自営業世帯(国保・国民年金)には“扶養”という考え方がありません。
・税の判定(110/123/160)と社会保険の判定(週20時間/130)は別物です。

制度意味主な対象いつ効く?ひと言ポイント
110万円(※)住民税多くの自治体で課税開始の目安単身・一般例翌年度の住民税所得税とは別判定。自治体差あり
123万円所得税標準的な所得税の非課税ライン/配偶者控除の上限給与所得者当年の所得税基礎控除58万+給与所得控除65万=123万
160万円所得税・配偶者特別控除配偶者特別控除の満額ゾーン上限(その後〜約201.6万円まで段階的に減額)夫婦世帯当年の所得税「1円超でゼロ」ではなく段階的に減る
週20時間社会保険(加入要件)週20時間以上なら会社の社保加入が基本へ(移行中)短時間勤務条件を満たした時点従業員数や賃金要件は段階的に縮小・撤廃の方向
130万円社会保険(被扶養)会社員の健保の「家族」に入れる目安(年収見込み)会社員の家族見込みで常時判定106(週20h等)に該当する人は年収130万未満でも加入=扶養外
(※)”住民税の非課税・課税の基準は自治体によって異なります。必ずお住まいの自治体の公式情報で最新の基準をご確認ください

A. 会社員の家族(パート・アルバイト等)

家族に会社員(健康保険+厚生年金の加入者)がいて、自分はその**「被扶養者」**になっているケース。

  • 被扶養者の年収が130万円以上になると扶養から外れるのが一般的なルールです(判定は「今後1年の見込み年収」が基準)。
  • 一時的に130万円を超えただけなら、事業主の証明があれば被扶養のまま継続できる特例が用意されています。

B. 自営業(フリーランス・個人事業主)の家族

  • 国民健康保険・国民年金が基本。
  • 国民健康保険には「扶養」の制度がありません。 家族それぞれが保険料を払うのが原則です(=130万円という“扶養の線引き”は存在しません)。

ポイント

  • 130万円の話は、**会社員の健康保険の「被扶養者」**に関するルール。
  • 自営業世帯には当てはまりません。(それぞれが国民健康保険・国民年金を負担します)

扶養を外れたとき「減る(マイナス)」もの

  • 今の手取り:健康保険料・厚生年金保険料が給与から引かれる分、毎月の手取りは減る
  • 世帯の税金の軽減:配偶者控除/配偶者特別控除が減るまたは使えなくなるため、世帯の税負担が増える可能性
  • 会社の配偶者手当:ある場合、支給がなくなることがある。

扶養を外れたとき「増える(プラス)」もの

  • 将来の年金額:厚生年金(報酬比例)が付くため、老後の年金が増える
  • 現役向けの給付が使える(会社の健康保険・雇用保険に加入する場合)
    • 傷病手当金:病気・けがで働けないときに賃金の約3分の2最長1年6か月支給(健康保険)
    • 出産手当金:産前産後の休業中、日額=標準報酬日額×2/3(健康保険)
    • 育児休業給付金:育休開始〜6か月は賃金の67%、その後は50%(雇用保険・要件あり)

ここが注目!!!

短期(目先の手取り)は減りがち。
でも長期(将来の年金・もしもの給付)は手厚くなる——これが「トレードオフ」です。

1) 会社員の家族で、パート・アルバイトの人

  • 年収を上げる/週の勤務時間が増える
    会社の社会保険に加入(=毎月の負担は増えるが、将来の年金・給付は厚く
  • 年収130万円未満でも、今後は週20時間以上など勤務時間の基準で加入になる場合あり(制度拡大の方向)
  • 一時的に130万円超は、事業主の証明扶養継続OKの特例あり

2) 自営業の家族で手伝い・パートをする人

  • もともと国民健康保険・国民年金なので、年度途中で”扶養内→外”の線引きはなし
  • パート先で社会保険に加入するほど働くなら、国保→会社の健康保険+厚生年金へ切替(負担は増えるが保障は厚く

想定:時給1,200円/週18時間 → 週24時間に増やす(月4週とする)

  • 年収の増加(プラス)
    1,200円 ×(24−18)h × 4週 × 12か月 = 34万5,600円の増
  • 加入後に払うようになるもの(目安・マイナス)
    • 厚生年金保険料(本人負担):標準報酬 × 約9.15%
    • 健康保険料(本人負担):都道府県・組合で異なるが約5%前後
      → 合計でだいたい年収の13〜15%程度毎年の負担
      (※例として、加入後の見込み年収を120万円と仮定すると、約15.6万円(= 120万円×13%)
  • 税金(マイナス)
    年収増分に応じて所得税・住民税が増える
  • 世帯の控除(マイナス)
    扶養していた側の配偶者控除/配偶者特別控除が減る可能性
  • 会社の配偶者手当(マイナス)
    あればなくなることがある
  • 使えるようになる給付(プラス)
    将来の厚生年金傷病手当金(賃金の約2/3を最長1年6か月)/出産手当金(標準報酬×2/3)/育児休業給付金(6か月67%、以降50%)

ざっくり比較(数字の当てはめ例)

  • 増える(プラス)
    • 収入アップ分:+34.6万円
  • 減る(マイナス)
    • 社会保険料(13%で試算):−15.6万円
    • 税金の増加(仮に):−3.0万円
    • 世帯の控除減(仮に):−3.0万円
    • 会社の配偶者手当(仮に・年):−5.0万円

今年の家計の差
= +34.6万 −15.6万 −3.0万 −3.0万 −5.0万
+8.0万円(プラス)

注意:保険料率や税率、配偶者手当の有無はご家庭で大きく違います。
実務ではあなたの勤務地の健康保険料率ご家庭の税率で差し替えてください。

  • 傷病手当金(健康保険)
    条件を満たせば、仕事を休んだ4日目から「標準報酬日額の3分の2」が支給。最長1年6か月
    ※国民健康保険には原則制度なし(自治体の任意給付がある場合あり)
  • 出産手当金(健康保険)
    産前42日・産後56日の範囲で、日額=標準報酬日額×2/3。会社から給与が出る場合は調整あり
  • 育児休業給付金(雇用保険)
    育休開始〜6か月は67%、その後は50%。一定の要件・上限あり
  • 時給アップ/勤務時間増/賞与ありで、収入の伸びが大きい
  • 出産・育休の予定があり、出産手当金・育児休業給付金の活用見込みがある
  • 正社員・短時間正社員ルートが開ける(昇給・賞与・退職金・企業年金など)
  • 自営業世帯で、いずれにせよ家族全員が国保・国年を払う前提なら、扶養にとどまるメリットが小さい
  • 130万円の壁は、会社員の健康保険の「被扶養者」の話。
    自営業世帯(国保・国年)には“扶養”がないので130万円は関係しません
  • 扶養を外れると、目先の手取りは減りがち(マイナス)。でも、将来の年金傷病手当金・出産手当金・育児休業給付金などの保障は増える(プラス)
  • 判断のコツは、今年の家計(短期)と3〜5年先(中期)の両方で増える/減るを並べて比較すること。
  • 会社員の家族で働く人は、年収だけでなく勤務時間でも社会保険加入になる流れに注意。
  • 最後は、**あなたの数字(時給・時間・保険料率・控除・手当)**で当てはめて試算しましょう。

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