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最近、ふと「配偶者控除ってなんでこんなにややこしいんだろう?」と思う機会がありました。
結婚して家計を考える中で、「配偶者控除」「配偶者特別控除」という言葉を良く聞くことがあると思いますが、その違いや仕組みがとにかく分かりづらい。
税金の制度だから仕方ないと諦めかけたのですが、「これってもっとシンプルにできるんじゃないか?」と疑問に思い、調べてみたことを自分なりに整理してみることにしました。
今は令和6年ですが、令和7年からは少し税制も変わる予定。この記事では、現時点での制度を中心にまとめつつ、今後の改正も含めてお話していきます。
✅ 配偶者控除・配偶者特別控除とは?
まず「控除」ってそもそも何?という方のためにざっくり言えば、「課税される前に引いてもらえる金額」のことです。つまり、収入が同じでも、控除が多ければその分、税金は軽くなります。
中でも「配偶者控除」と「配偶者特別控除」は、結婚している人に関係のある控除。
配偶者の収入が一定以下なら、納税者である自分の税金が軽くなるという仕組みです。
💡 配偶者控除
配偶者控除は、配偶者の所得が「48万円以下」であることが条件。給与収入だけで言えば、おおよそ「年収103万円以下」にあたります(給与所得控除が65万円あるため)。
また、納税者本人の合計所得金額が「1,000万円以下」でなければ使えません。
納税者本人の所得額 | 一般の配偶者 | 老人配偶者(70歳以上) |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万超~950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万超~1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
1,000万円超 | 対象外 | 対象外 |
💡 配偶者特別控除
配偶者の所得が48万円を超えていて、配偶者控除が受けられないときに登場するのが「配偶者特別控除」です。
配偶者の所得 | 納税者の所得900万円以下 | ~950万円以下 | ~1000万円以下 |
---|---|---|---|
48万超~95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万超~100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
100万超~105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
105万超~110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
110万超~115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
115万超~120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
120万超~125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
125万超~130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
130万超~133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
✅ 実はあまり変わらない控除内容
この表を見ても分かる通り、「配偶者控除(最大38万円)」と「配偶者特別控除(最大38万円)」では控除額の最大値が同じであり、段階的に下がっていくという違いだけ。特に配偶者の所得が95万以下で納税者の所得が900万以下では、どちらも同じ38万となっている。
つまり、制度としては区別されていても、実質的には同じような効果を持っているケースが多く、制度を2つに分けて運用する必要性が本当にあるのか?という疑問が湧いてきます。
✅ なぜここまで複雑になったのか?
こうして見てみると「配偶者控除」「配偶者特別控除」と2つに分ける必要って本当にあるの?と思わずにはいられません。
そもそもなぜこのような複雑な制度になってしまったのか、背景を少し探ってみました。
◆ 段階的な制度改正の積み重ね
実はこの控除制度、何度も改正されています。
- 平成29年までは、配偶者の収入が「103万円以下」なら配偶者控除、超えたら対象外というシンプルなルールでした。
- その後、女性の社会進出を支援するという名目で「配偶者特別控除」が拡充され、最大133万円まで控除対象になりました。
- さらには、納税者本人の所得制限(900万、950万、1000万円の3段階)も追加され、「誰がどれだけ控除できるのか」が非常に見えにくくなりました。
◆ 社会保険との食い違い
ややこしさの一因として、「税制上の控除」と「社会保険料の負担基準」がバラバラであることも挙げられます。
いわゆる「130万円の壁」「106万円の壁」「150万円の壁」など、制度ごとに基準額が違うため、年収の調整が本当に難しいのです。
この複雑な背景をふまえつつ、後編では「令和7年度の税制改正」によってどう変わるのか、そして「もっとシンプルな制度にできるのでは?」という提案をしていきたいと思います。
✅ 制度を複雑にする理由とは?
それでは、なぜ「配偶者控除」と「配偶者特別控除」がわざわざ分けられているのでしょうか?
理由のひとつは、“夫婦の働き方”や“世帯年収のバランス”に応じた細かな調整を行うためです。専業主婦(夫)世帯と、共働き世帯のどちらにとっても「ある程度の公平感」を出すために、段階的な制度設計が導入されました。
とはいえ、多くの納税者にとってその違いは非常に分かりにくく、年末調整や確定申告を複雑にしている原因のひとつでもあります。
✅ 制度の形骸化と誤解の多さ
たとえばよくある誤解として、
- 「年収103万円を超えたら扶養を外れる」
- 「130万円を超えると全部ダメになる」
- 「103万円の壁」「130万円の壁」などが絶対ラインである
といった声がありますが、実際にはそれぞれ「所得税」「社会保険」「配偶者控除・特別控除」など、まったく違う制度が混在しているのです。
さらに、基礎控除や給与所得控除の改正により、年収160万円でも所得税がかからないケースがあるなど、実態が変化しているにもかかわらず、周知が追いついていないのが現状です。
✅ 制度見直しの可能性と今後の動き
こうした背景もあり、今後は配偶者控除・特別控除の見直しや、よりシンプルな税制への再設計が議論されていく可能性があります。
実際、令和7年度の税制改正では、基礎控除額の引き上げや扶養控除の見直しも進んでおり、こうした変化の中で「控除の一本化」や「夫婦単位での課税制度」の導入が検討されるかもしれません。
✅ まとめ:本当にこの制度は必要なのか?
「配偶者控除」「配偶者特別控除」は、税負担の軽減という意味ではありがたい制度です。
しかしその一方で、
- 内容が複雑すぎて正確に理解されていない
- 実質的な差がほとんどないのに制度が分かれている
- 手続きや申告の手間ばかりが増えている
という状況が生まれています。
家計を支えるために共働きが当たり前になった今、制度を分ける必要があるのか?そのものが時代に合っているのか?
これを見直すべき時期に来ているのかもしれません。