住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)|完全ガイド【2025年版】

 マイホームを購入するとき、多くの人が最初にチェックする制度が「住宅ローン控除」です。住宅購入には数千万円単位の費用がかかりますが、この制度を使うと、毎年の税金が大きく減り、長期的に数百万円規模の節税効果が期待できます。一方で「条件が複雑でよくわからない」「控除がどれくらい受けられるのか不安」といった声も少なくありません。この記事では、住宅ローン控除の仕組み、対象となる条件、控除額の計算方法、必要書類、最新の改正情報までを詳しく解説します。これを読めば、制度を正しく理解して安心して活用できるはずです。

住宅ローン控除は、“所得から引く”のではなく税金そのものから引く税額控除です。節税効果が大きいのが最大の魅力で、住宅取得の強い味方となります。

この記事でわかること

  • 住宅ローン控除の基本と目的
  • 対象者・住宅・ローン・入居時期などの適用条件
  • 控除額の仕組みとシミュレーション例
  • 初年度の確定申告と2年目以降の年末調整の流れ
  • 最新の制度改正と今後の見通し
  • 節税効果を最大化するための注意点

 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、個人が住宅ローンを利用して自宅を購入またはリフォームした場合に、年末時点のローン残高に応じて所得税から一定額を直接差し引ける制度です。所得控除と異なり、計算された税額から直接控除されるため、効果が大きいのが特徴です。

制度の目的

 この制度は、国民が住宅を取得しやすくするために設けられています。さらに、国は近年、省エネ住宅や長期優良住宅の普及を推進しており、性能が高い住宅ほど控除額が大きくなる設計となっています。住宅政策と環境政策を組み合わせた仕組みとも言えるでしょう。

 住宅ローン控除は「年末ローン残高 × 0.7%」で控除額を求めます。例えば、年末残高が3,000万円なら控除額は21万円です。ただし、実際に支払う税額を超えて控除を受けることはできません。つまり、計算上21万円であっても、納める税金が15万円なら控除額は15万円が限度となります。

ポイント

  • 控除率:年末残高の0.7%
  • 控除期間:新築は13年、既存住宅は10年が原則
  • 控除限度額:住宅性能・入居年・世帯の属性によって変動
  • 住民税への適用:所得税で控除しきれない分は住民税からも一部控除(上限9万7,500円まで)

住宅ローン控除は誰でも使えるわけではなく、対象者や住宅の条件が細かく決められています。

対象者

  • 合計所得金額が原則2,000万円以下
  • 自分が住むための住宅であること
  • 贈与や親族からの取得は対象外
  • サラリーマンは初年度は確定申告が必要、2年目以降は年末調整でOK

住宅の要件

  • 床面積50㎡以上で、その半分以上を居住用に使用
  • 新築、中古、増改築が対象
  • 中古住宅は昭和57年以降の新耐震基準に適合していること
  • 2024年以降に建築確認を受けた新築は、省エネ基準に適合していることが必須

ローンの要件

  • 返済期間が10年以上
  • 銀行などの金融機関からの借入であること(親族・知人からは対象外)
  • 勤務先からの借入は利率が0.2%以上であること
  • 土地のみは対象外。ただし、2年以内に住宅を建てる場合は対象

入居時期

  • 工事完了から6か月以内に入居し、その年の12月31日まで継続して住むこと
  • 入居期限は法改正や特例により変わるため最新情報を確認すること

 控除額は住宅性能や入居年によって変わります。たとえば、長期優良住宅やZEH水準住宅は上限が高く設定されており、省エネ基準に適合しない住宅との差は大きくなります。

新築・買取再販住宅(13年)

  • 長期優良住宅・低炭素住宅:年間最大35万円
    長期優良住宅とは耐震性や省エネ性能に優れ、長期間良好に住み続けられると認定された住宅です。低炭素住宅は二酸化炭素排出を抑えるための基準を満たした環境性能の高い住宅を指します。
  • ZEH水準省エネ住宅:年間最大31.5万円
    ZEH(ゼッチ)は「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、断熱性能や省エネ設備によりエネルギー消費を抑えつつ、太陽光発電などでエネルギーをまかなえる住宅です。
  • 省エネ基準適合住宅:年間最大28万円
    国が定めた省エネ基準に適合した住宅。断熱性能や設備の効率性などが一定以上であることが求められます。
  • その他の住宅:年間最大21万円(2024年以降は対象外)
    上記の基準に該当しない一般的な住宅を指します。ただし2024年以降に建築確認を受けた場合は対象外です。(2024年以降は対象外)

既存住宅(10年)

  • 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅:年間最大21万円
    これらは新築だけでなく、中古住宅でも要件を満たしていれば対象になります。中古の場合、耐震性能(昭和57年以降の新耐震基準)が必須で、さらに省エネ性能などの条件をクリアしている必要があります。
  • その他の住宅:年間最大14万円
    基準を満たさない一般的な住宅ですが、2023年末までに建築確認を受けたものなら対象になります。ただし2024年以降は控除の対象外です。

増改築の住宅ローン控除(リフォームにも使える特例)

 住宅ローン控除は新築や購入だけでなく、一定の条件を満たした「増改築・リフォーム」にも適用できます。
対象となるのは耐震改修、省エネ改修、バリアフリー改修などで、国が定める基準に合致した場合に限られます。

主な条件

  • 工事費が100万円以上であること
  • 工事完了後6か月以内に居住を開始し、その年の12月31日まで居住していること
  • 増改築に伴う床面積が50㎡以上で、その半分以上を居住用に使うこと
  • 耐震基準や省エネ基準に適合していること(改修の種類によって異なる)

 控除率は基本制度と同じ「年末残高×0.7%」で、控除期間は原則10年です。
耐震リフォームや省エネ改修は国の補助金制度と併用できるケースもあり、節税と補助金のダブルメリットが狙えます。

認定住宅の投資型減税(ローン不要でも使える)

もう一つ覚えておきたい制度が「認定住宅の投資型減税」です。
これは、長期優良住宅や低炭素住宅などの「認定住宅」を取得した場合に、ローンを組まなくても所得税から直接控除が受けられる制度です。

特徴

  • 控除額は「認定住宅の取得価格 × 10%」が上限
  • 控除期間は1年のみ(住宅ローン控除のように10年以上続くわけではない)
  • 対象は長期優良住宅や低炭素住宅など、一定の性能基準を満たす住宅
  • 所得税で控除しきれない場合、翌年度の住民税からも控除可能

使い分けのポイント

  • ローンを組む場合 → 通常の住宅ローン控除(13年 or 10年)
  • ローンを組まない場合 → 投資型減税を利用
  • 認定住宅ならどちらの制度も対象になりうるため、自分の資金計画に合わせて選ぶことが大切です。

  • 誰が決めるの?
    認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅・ZEHなど)は、自治体や指定された審査機関が最終的に「認定通知書」を出すことで正式に決まります。ハウスメーカーや工務店が「この住宅は長期優良住宅です」と勝手に名乗れるわけではありません。
  • ハウスメーカーや工務店の役割
    実際の申請手続きは、多くの場合ハウスメーカーや工務店が代理で行ってくれるケースがほとんどです。設計の段階で必要な性能(耐震・断熱・省エネ設備など)を盛り込み、申請書類をまとめて審査機関に提出します。施主(購入者)が自分で役所に持っていくことは少なく、建築会社がサポートしてくれる流れになっています。
  • どこのメーカーでも対応している?
    大手ハウスメーカーや省エネ住宅に力を入れている工務店なら、認定住宅に対応できる体制を整えていることが多いです。ただし、すべての工務店や建築会社が対応しているわけではありません。特に小規模な工務店の場合、長期優良住宅やZEHなどの認定申請に慣れていないケースもあります。
    → そのため、家づくりの初期段階で「長期優良住宅にしたい」「ZEH仕様にしたい」と伝えて、対応可能か確認することが大切です。
  • 申請の流れ(ざっくり)
    1. 設計段階で要件を満たすプランを作成
    2. 工務店やハウスメーカーが必要書類をまとめる
    3. 指定審査機関や自治体に申請
    4. 基準を満たしていれば「認定通知書」が交付される
    5. この通知書を確定申告時に添付することで住宅ローン控除の優遇が受けられる

👉 まとめると、「認定住宅かどうか」はハウスメーカーが決めるものではなく、あくまで自治体や審査機関の認定で決まるという点が重要です。
ただし、そのための準備や申請は工務店やハウスメーカーが代行するのが一般的なので、施主は「対応できる業者を選ぶ」ことが大切になります。

 住宅ローン控除の控除額は「年末時点のローン残高 × 控除率(0.7%)」で求められます。ただし、実際に支払った所得税と住民税を超えて控除を受けることはできません。つまり「計算上の控除額」と「実際の税負担」の少ない方が上限になります。

新築・買取再販住宅の場合

  • 控除率:年末残高 × 0.7%
  • 控除期間:原則13年
  • 控除上限:住宅の性能に応じて 21万~35万円(年間)
  • 所得税で控除しきれない場合 → 住民税からも控除可(上限9万7,500円)

計算例 ※年間の所得税が17万円だった場合

  • 年末残高3,000万円 → 控除額21万円
    所得税17万円+住民税4万円 → 合計21万円(控除額21万円は全て使い切れる)
  • 年末残高4,000万円 → 控除額28万円
    所得税17万円+住民税9万7,500円 → 合計26万7,500円(差額1万2,500万円は使えない)

既存住宅(中古)の場合

  • 控除期間:10年
  • 控除上限:住宅の性能に応じて 年間最大21万円(その他は14万円)
  • 控除率や仕組みは新築と同じ(住民税上限9万7,500円あり)

増改築の住宅ローン控除

  • 耐震・省エネ・バリアフリーなど、一定のリフォーム工事に適用
  • 工事費100万円以上、返済期間10年以上が条件
  • 控除率:年末残高 × 0.7%
  • 控除期間:10年
  • 控除限度額:新築に比べると低め(年間最大20万円程度が一般的)
  • 所得税から引き切れない分は住民税から控除(上限9万7,500円)

認定住宅の投資型減税

  • 住宅ローンを組まなくても使える制度
  • 控除額:住宅の取得価格 × 10%(上限650万円)
  • 控除は1年限り(ローン控除のように10年以上続かない)
  • 所得税から控除しきれない場合は翌年度の住民税からも一部控除可能(上限9万7,500円)

ポイントまとめ

  • 新築・中古・増改築・投資型減税といった制度ごとに、控除率・期間・上限額が違うので注意。
  • 所得税から引ききれない分は自動的に住民税に回るが、住民税には年間9万7,500円の上限がある。
  • 所得が少ない場合や住宅性能によっては「控除額を使い切れない」こともあるため、事前の試算が重要。

初年度(確定申告)

 初年度は全員が確定申告をする必要があります。必要書類には、年末残高証明書、登記事項証明書、契約書の写し、本人確認書類などが含まれます。確定申告の時期は入居した翌年の2月16日から3月15日です。

2年目以降(年末調整)

給与所得者は2年目以降、勤務先の年末調整で控除が受けられます。税務署から送られてくる控除証明書と金融機関の残高証明書を提出すれば手続きは完了です。

  • 2022年の改正で控除率が0.7%に統一、期間は新築13年・既存10年となりました。
  • 2024年からは新築住宅は省エネ基準への適合が必須となり、基準を満たさない住宅は対象外です。
  • 子育て世帯や若者夫婦世帯には特別な優遇があり、借入限度額が維持されます。
  • 2025年度は現行制度の最終年とされており、2026年以降の制度は未定です。

 住宅ローン控除を利用することで、最大600万円以上の節税効果を得られるケースもあります。しかし、返済期間が10年未満になる繰上げ返済を行うと控除が受けられなくなるなどの注意点もあります。制度を正しく理解し、計画的に利用することが大切です。

 住宅ローン控除は、マイホームを取得した人にとって強力な節税制度です。ただし、適用条件や控除額の上限は住宅の性能や入居年によって変わり、制度自体も数年ごとに改正されます。住宅購入を検討している方は、最新の制度内容を確認し、自分がどれだけ控除を受けられるのか事前にシミュレーションしてみると安心です。

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