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「国会議員の給料って高すぎない?」「市長や知事ってそんなにもらってるの?」
そんな声をニュースやSNSで見かけたことはありませんか?
私たちが納めている税金から支払われている政治家の報酬や退職金には、しばしば批判の声が上がります。一方で、「責任ある立場には相応の報酬が必要」との意見もあります。
この記事では、国会議員や地方自治体の長(知事・市長など)の給与・退職金制度の仕組みについて、初心者にも分かりやすく解説していきます。
今回はまず「給与と手当の仕組み」について詳しく見ていきましょう。
✅国会議員の給与・手当の仕組み
基本給にあたる「歳費」とは?
まず、国会議員の基本的な給料は「歳費(さいひ)」と呼ばれています。
これは憲法第49条で定められたもので、「国会議員には法律で定める報酬(=歳費)が支給される」とされています。
2024年時点では、歳費は月額約129万円(年額約1,550万円)となっており、これが国会議員の基本給にあたります。
この歳費は、企業で言えば「基本給」のようなもので、ここに様々な手当が上乗せされる仕組みです。
では、その「手当」にはどんなものがあるのでしょうか?次に詳しく見ていきましょう。
国会議員に支払われる各種手当
国会議員には、歳費以外にも以下のような手当が支給されます。
✅ 文書通信交通滞在費(旧制度名)
- 月額100万円が支給されていましたが、現在は「調査研究広報滞在費」に変更され、実費精算+領収書添付の提出が義務化されています(インボイス制度の影響もあり)。
- 「地元と東京を行き来する交通費」や「資料購入費」などが対象。
✅ 立法事務費
- 月額65万円が所属政党に直接支給され、事務所運営や政策立案活動に充てられます。
- 実際に議員個人が使えるわけではないが、活動に関わる重要な資金。
✅ 公設秘書制度(人件費は国が負担)
- 政治活動を支える秘書(政策担当・第一・第二)3人までを国が給与負担。
- そのほか、JRの無料パス制度、議員宿舎の提供なども存在。
このように、国会議員は基本給に加えて様々な支援を受けており、実質的な「待遇」はかなり手厚くなっています。
それでは、実際に「年間でいくらぐらい」になるのでしょうか?次に、総支給額を確認してみましょう。
年間総支給額とその内訳
実際の国会議員の年間支給額は、以下のようにまとめられます(一例・概算)。
項目 | 金額(年額) |
---|---|
歳費(基本給) | 約1,550万円 |
調査研究広報滞在費(手当) | 約1,200万円(上限) |
立法事務費(政党へ) | 約780万円 |
秘書3人の給与(別枠) | 約2,000万円以上 |
その他特典(宿舎・パス等) | 付加的に多数 |
このように、「表向きの年収」は約3,000万円規模であり、秘書給与などの付加的要素を含めれば5,000万円規模の公的支援を受けているとも言われています。
ここで「知事や市長も同じくらいなの?」と疑問を持たれた方もいるかもしれません。
では次に、地方自治体の長(知事・市長など)の給与の仕組みについて見ていきましょう。
✅地方自治体の長(知事・市長など)の給与制度
誰がどうやって報酬を決めているの?
地方自治体の首長(知事・市長・町長など)の給与は、「自治体ごとの条例」で決められています。
つまり、東京都と鳥取県では、報酬額に差があって当然ということです。
実際の報酬額を決める際には、「報酬等審議会」という第三者機関の意見を参考にして条例を制定・改正する建前となっています。
しかし一部では「報酬審議会が形骸化しており、実質的に首長の判断で報酬を維持しているケースがある」との指摘もあります。
実際の金額はどのくらい?(例:主要都市)
以下は2024年時点の例です:
自治体 | 知事・市長の月額報酬 | 年収換算(12か月) |
---|---|---|
東京都知事 | 約145万円 | 約1,740万円 |
大阪市長 | 約130万円 | 約1,560万円 |
札幌市長 | 約125万円 | 約1,500万円 |
中には報酬を自主返納する首長もいますが、おおむね年収1,500万〜1,700万円前後が一般的な水準です。
このように、地方自治体の長も責任の重さに見合った報酬が支払われています。
それでは、こうした職に就いたあと「退職金」はどうなっているのでしょうか?
次に、その制度について詳しく解説していきます。
👉後編では以下の内容を解説
・最新の改革議論や見直し事例
・国会議員・地方首長の退職金の仕組み
・なぜ高額なのか?という批判とその根拠
✅国会議員と地方首長の退職金制度
「現職中は高い給与が支給されているけど、辞めた後はどうなるの?」
ここでは国会議員・知事・市長の退職金制度について詳しく見ていきます。
国会議員の退職金制度
かつては「議員年金」という制度がありましたが、2006年に廃止されました。
理由は「国民年金との格差が大きすぎる」「税金からの支出が過大である」といった批判が高まったためです。
現在は年金こそ廃止されましたが、退職金に相当する「歳費法に基づく支給」が今も続いています。
✅ 支給額の概要
- 任期満了や解散により退職した際に支給
- 「在職年数 × 一定額(例:1年あたり400万円程度)」で計算
- 1期4年で約1,600万円程度となる場合も
つまり、数年勤めただけでも1000万円を超える退職金を得ることが可能です。
知事・市長の退職金制度
地方自治体の長には、ほぼ例外なく退職金制度があります。
その金額は「月額報酬 × 支給月数」という形で決まりますが、支給月数は自治体ごとに条例で定められています。
✅ 例:東京都知事の退職金(2024年基準)
- 月額145万円 × 支給月数(4年任期で最大45月分)
- 約6,500万円の退職金となるケースも
市区町村レベルでも、1期で1,000万円以上、複数期務めれば数千万円になることもあります。
🧭なぜ退職金が高額になるのか?
では、なぜこれほどまでに高額な退職金が支払われるのでしょうか?
その背景には、いくつかの“理論的な正当化”が存在しています。
高額支給を正当化する理由
✅ 政治的独立性を保つため
- 金銭的に困らないようにすることで、買収や圧力に屈しない自立性を担保
✅ 優秀な人材確保のため
- 民間企業から有能な人材を登用しやすくする
- 報酬が低いと「なり手がいない」状況を避ける
✅ 任期中の重責と短期性の補填
- 安定性がない職業なので、その分を退職金で補うという考え方
このように、高額な退職金には「制度上の理屈」もあるということです。
しかし、現実には強い批判の声もあります。次にその論点を見てみましょう。
高額退職金に対する批判と実例
✅ 選挙で選ばれただけで巨額の退職金がもらえるのはおかしい?
- 任期満了しなくても支給されるケースがある
- 政治家によっては「わずか数か月」でも数百万円を受け取る例も
✅ 自治体財政と見合っていない
- 人口減少や財政難の自治体で高額退職金が問題視される
- 市民から「不公平」「透明性に欠ける」との批判
✅ 自主返納の動き
- 一部の首長は「退職金ゼロ条例」や返納制度を採用
- 実例:福岡市長が数千万円の退職金を返上/神戸市長が支給辞退
🧭最近の議論と改革の動き
ここでは、国レベル・自治体レベルで進んでいる改革や見直しの事例を紹介します。
国会議員の手当見直しと透明化
✅ 文書通信交通費の制度変更(2022年)
- インボイス制度により領収書提出義務が強化
- 「使い道が不透明だった」手当の見直しが進行中
✅ 政党助成金・立法事務費の使途公開論
- 国民の税金が原資である以上、使途の公開と明細提出を求める声
地方自治体での報酬・退職金見直し
✅ 退職金の支給月数を減らす条例改正
- 一部の自治体では報酬審議会の提言を受けて退職金減額へ
✅ 若手首長の改革姿勢
- 「政治家=高給取り」というイメージを変えるため、自主カットを宣言する若手も増加中
✅ まとめ:私たちにできることは?
政治家や首長の給与・退職金制度には、一見すると「えっ、そんなにもらえるの?」と思う部分が多くあります。
しかし、制度にはそれなりの理由や目的があるのも事実です。
とはいえ、市民にとって重要なのは**「透明性」と「納得感」**です。
私たちが選挙で選ぶ政治家たちは、こうした制度に基づいて報酬を受け取っている以上、選挙を通じてチェックすることが可能です。
制度そのものを知り、正しく判断することが、より良い政治参加への第一歩になるのではないでしょうか。