【市長と知事の違い】地方自治体の仕組みを学ぼう

「市長と知事、どっちが偉いの?」「どう違うのか分からない」という声をよく聞きます。
どちらも“地域のトップ”というイメージがありますが、実は役割や権限、担当している範囲が異なります。

この記事では、市長と知事の違いや、地方自治体の仕組みについて、初心者にも分かりやすく解説します。
前編ではまず「市長と知事の役割と権限」「任期や選挙の仕組み」について見ていきましょう。

市長も知事も、地域の“行政のリーダー”ですが、実は担当する地域の範囲と仕事の内容が大きく異なります
この章では、両者の違いを順番に見ていきましょう。

🔷 地方自治体の種類(市区町村と都道府県)

まず、そもそも「どこを担当する人なのか」が異なります。

  • 市長(しちょう):市区町村(し・く・ちょう・そん)のリーダー
  • 知事(ちじ):都道府県(と・どう・ふ・けん)のリーダー

このように、市長と知事は別の自治体を担当しているのです。
両者は、どちらも「首長(くびちょう)」と呼ばれ、地域のトップとして大きな権限を持っています。

🔷 担当する行政範囲の違い

担当する“仕事の内容”にも違いがあります。

  • 市長の仕事
     保育園・ごみ収集・住民票の発行・健康診断・小中学校の運営など、私たちの生活に直接関わる身近な行政が中心です。
  • 知事の仕事
     県立高校・広域道路・防災対策・大規模病院・経済振興など、より広い範囲をカバーする広域行政が中心です。

つまり、市長は生活の細かいところ、知事は広域連携や全体調整に関わるという役割分担があります。

🔷 議会との関係と「チェック機能」

どちらの首長(くびちょう)も、単独で何でも決められるわけではありません。
それぞれの地域には**議会(市議会・県議会)**が存在し、議会と連携しながら政策を進めていく仕組みになっています。

  • 首長(市長・知事)は“執行部”として予算や条例を提案
  • 議会はそれを“チェック”し、採決を行う

この関係は「二元代表制」と呼ばれ、行政の暴走を防ぐための仕組みでもあります。

「どうやって市長や知事は決まるの?」
ここでは、任期や選挙の基本的な仕組みを解説します。

🔷 任期は4年、再選制限なし

市長・知事ともに任期は4年です。
また、何回でも再選可能で、10年・20年と長く務める方もいます。

任期の終わりが近づくと、選挙が実施され、私たち市民が「このまま続投してほしいか」「別の人に任せたいか」を投票で判断するのです。

🔷 被選挙権の違い(立候補できる年齢)

意外と知られていないのが、立候補するための年齢制限です。

  • 市長選挙:25歳以上なら立候補可能
  • 知事選挙:30歳以上でなければ立候補できない

これは「知事のほうが広域を担当するため、より高い年齢が求められる」という考え方に基づいています。

🔷 選び方は「直接選挙」

市長も知事も、**私たち有権者が直接選ぶ「直接選挙」**で選ばれます。
これは「国会議員を選ぶ仕組み」と同じです。

つまり、「あの人に市や県のトップを任せたい!」と思えば、投票所に行ってその人の名前を書くだけで選べるということです。

後編では、次のような内容を解説します:

市長・知事選挙の投票方法とその重要性

地方自治体の構造と住民への影響

市長や知事の仕事は、それぞれ違う範囲を担当していることが分かりました。
ここからは、それらがどう**「地方自治体のしくみ」**としてつながっているのか、そしてそのしくみが私たちにどう影響するのかを見ていきましょう。

🔷 三層構造のしくみ(国 → 都道府県 → 市町村)

日本の行政は、主に以下のような3段階に分かれています。

  • 国(中央政府):法律の制定・全国政策の推進(例:内閣や省庁)
  • 都道府県(知事):広域行政・県単位の事業(例:高校・病院)
  • 市区町村(市長):身近な行政サービス(例:保育・ゴミ処理)

このように、私たちの暮らしに一番近いのは「市町村」であり、市長の仕事が最も“生活に直結”しています。

🔷 二重行政ってなに?

「二重行政(にじゅうぎょうせい)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これは、市と県が同じような事業を別々に進めてしまい、無駄が出てしまう状態を指します。

例:

  • 市と県のどちらも病院を作ろうとする
  • 似たような補助金制度が両方から出る

こうした重複を防ぐために、市長と知事の連携が非常に重要なのです。

※大阪都構想などは「二重行政の解消」が目的でした。

🔷 住民サービスに与える影響

市長や知事が変わると、地域の政策やサービスが大きく変わることがあります。

例:

  • 子育て支援策の拡充や削減
  • 公立病院の統廃合
  • インフラ整備や交通費の補助制度の見直し など

つまり、どんな人が市長や知事になるかで、自分の生活の質が変わるということです。

では、私たちが実際に投票するにはどうしたらいいのでしょうか?
この章では、選挙の流れと「なぜ投票が大事なのか」についてお話しします。

🔷 投票の基本情報

市長選挙や知事選挙は、以下のような流れで行われます。

  • 選挙の告示(こうじ)日に候補者が正式に立候補
  • 告示日から約1週間後に投票日(通常は日曜日)
  • 投票所には選挙のお知らせハガキを持っていく

満18歳以上の日本国民であれば、だれでも投票できます。
選挙区内に住民票があれば、期日前投票や不在者投票も可能です。

🔷 候補者の比較方法

「誰に入れたらいいかわからない…」という声はとても多いです。
でも、ポイントを押さえれば難しくありません。

  • 候補者の**公約(マニフェスト)**を確認する
  • 市や県のホームページや選挙公報を見る
  • 政党の支援があるか、無所属かなどもチェックポイント
  • 地元のニュースやSNSの情報も参考にしましょう

投票前に少し調べるだけで、「この人なら任せられそう」と思える候補が見つかることも多いです。

🔷 なぜ投票が大事なのか?

市長・知事は、予算の使い道や条例の決定など、地域を動かす強い権限を持っています。
だからこそ、投票することが「自分たちの暮らしを選ぶ」ことにつながります。

「どうせ誰がなっても同じでしょ」と思われがちですが、実際には市や県の政策に大きな差が生まれます。

そして、投票率が低いと、ごく一部の人の意見だけで首長が決まってしまうという危険もあります。

  • 市長は市町村の、知事は都道府県のリーダー
  • 担当する範囲や役割は大きく異なり、生活に与える影響も違う
  • どちらも私たちの直接投票で選ぶことができる重要なポジション

選挙に参加することは、未来の地域づくりへの“意思表示”です。
「仕組みを知ること」から、政治を“他人ごと”ではなく“自分ごと”にしていきましょう。

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