目次
相続税は「いくらからかかるのか」「どうやって計算するのか」が分かりにくい税金です。
しかし、全体の構造を理解すれば、決して複雑すぎるものではありません。
この記事では、2026年時点の制度を前提に
・基礎控除の正しい理解
・相続税の計算ステップ
・具体的なパターン別計算例
・控除や特例の影響
を体系的に整理します。
前回の記事で「相続財産の範囲(プラス/マイナス)」を確認しました。
今回はその財産をもとに「税額がどう決まるのか」を見ていきます。

相続税がかかるかどうかの分岐点
まず最重要ポイントは基礎控除です。
基礎控除(2015年改正以降継続中)
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
この制度は2015年1月1日の改正で現行水準に引き下げられ、2026年現在も継続しています。
例
相続人3人の場合
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
遺産総額が4,800万円以下であれば相続税は発生しません。
つまり、**最初の判断は「基礎控除を超えるかどうか」**です。
相続税の計算5ステップ
相続税の流れは次の通りです。
1 相続財産を合算する
2 基礎控除を差し引く
3 法定相続分で仮計算する
4 税率を適用する
5 各種控除・特例を適用する
この順番が崩れると理解が混乱します。
パターン別 計算例
パターン① 標準的なケース(相続税が発生する)
前提条件
・相続人:配偶者+子2人(3人)
・遺産総額:8,000万円
・生前贈与なし
① 基礎控除
3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
② 課税遺産総額
8,000万円 − 4,800万円 = 3,200万円
③ 法定相続分で仮分割
配偶者 1,600万円
子2人 各800万円
④ 税率適用(速算表)
・1,600万円 × 15% − 50万円 = 190万円
・800万円 × 10% = 80万円
⑤ 相続税総額
190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円
これが相続税の総額です。
パターン② 配偶者の税額軽減でゼロになるケース
前提条件
・相続人:配偶者+子1人
・遺産総額:1億円
・配偶者が全額取得
① 基礎控除
4,200万円
② 課税遺産総額
1億円 − 4,200万円 = 5,800万円
仮計算では約770万円の税額。
しかし、
配偶者の税額軽減(現行制度)
次のいずれか多い金額まで非課税
・1億6,000万円
・法定相続分相当額
今回1億円取得 → 非課税枠内
結果
相続税ゼロ
ただし、将来配偶者が亡くなった際の「二次相続」では税額が増える可能性があります。
パターン③ 基礎控除ギリギリ+生前贈与あり
前提条件
・相続人:子3人
・遺産総額:4,500万円
・3年前に300万円贈与
① 基礎控除
4,800万円
一見すると非課税です。
② 2024年改正後の持ち戻し(7年ルール)
2024年改正により、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されます。
4,500万円 + 300万円 = 4,800万円
税額はゼロですが、贈与分は計算対象です。
では「毎年110万円ずつ」なら安全か?
例
110万円 × 3年 = 330万円
贈与税はかかりません。
しかし7年以内なら持ち戻し対象。
4,500万円 + 330万円 = 4,830万円
基礎控除4,800万円を超え、課税遺産総額30万円発生。
つまり、110万円以内でも短期では相続税対策にならないのが現行制度です。
本当に効果を出すには、7年以上前からの計画が必要です。
パターン④ 小規模宅地等の特例で大幅減額
前提条件
・相続人:配偶者+子1人
・自宅土地6,000万円
・その他財産3,000万円
合計9,000万円
基礎控除4,200万円
課税遺産総額4,800万円
しかし
自宅土地に80%減額適用
6,000万円 → 1,200万円評価
総財産
1,200万円 + 3,000万円 = 4,200万円
結果
基礎控除内 → 相続税ゼロ
特例の有無で税額は劇的に変わります。
ここまでの整理
相続税は
・基礎控除
・持ち戻し
・配偶者の税額軽減
・小規模宅地等の特例
この4点で結果が大きく変わります。
単純に「財産額」だけでは判断できません。
次の記事へのステップ
ここまでで「相続税の仕組み」は理解できました。
しかし、実務上もっと重要なのは
生前にどう設計するかです。
特に重要なのが
・贈与税の基礎(110万円の暦年課税)
・相続時精算課税制度
・持ち戻し期間の影響
次の記事では「贈与税の基礎(110万円・暦年課税)」を詳しく解説します。
相続税を理解した今こそ、
生前対策の仕組みを学ぶ最適なタイミングです。
まとめ
相続税は
1 基礎控除を超えるか
2 法定相続分で仮計算
3 税率適用
4 特例調整
という流れで決まります。
110万円贈与も、7年ルールの影響を受けます。
短期対策ではなく、長期設計が重要です。
次は「贈与税の基礎」へ進み、生前対策の本質を理解していきましょう。
Q. 相続税は全員が支払う必要がありますか?
A. 基礎控除額を超えた場合のみ課税されます。多くの相続では税額が発生しません。
Q. 配偶者は相続税がかからないのですか?
A. 配偶者の税額軽減により一定額までは非課税になりますが、必ずゼロになるとは限りません。
Q. 基礎控除以下なら申告は不要ですか?
A. 原則不要ですが、小規模宅地等の特例などを適用する場合は申告が必要です。
Q. 相続税の税率は固定ですか?
A. 累進課税制度で、取得金額に応じて税率が段階的に上がります。
Q. 相続税の計算は自分でできますか?
A. 概算は可能ですが、特例や評価方法が複雑なため専門家相談が推奨されます。
