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離婚や出産が決まると、精神的にも忙しい日々が続きます。 ですがそのタイミングでこそ、**必要な手続きを「知っているかどうか」**が、今後の支援の受け取りに直結します。 この記事では、ひとり親になる前後にやっておくべき具体的な手続きをチェックリスト形式で解説します。
離婚時にやるべき5つの準備
離婚は、ひとり親となる大きな転機です。このタイミングでやるべき手続きや準備を怠ると、後から支援制度を受けられなかったり、トラブルの原因になったりすることもあります。以下の5つは、最低限確認しておきたい重要ポイントです。
①住民票や世帯主の変更
離婚後、住む場所や世帯構成が変わる場合は、速やかに住民票の異動届や世帯主変更届を出す必要があります。
- 別居する場合 → 転出届・転入届を提出し、住民票を移す
- 同居で世帯を分ける場合 → 世帯分離届を提出
- 世帯主が変更になる場合 → 世帯主変更届を提出
📌これらは市区町村の役所で無料で手続き可能です。
②養育費の取り決めと公正証書化
養育費の取り決めは、ひとり親家庭の経済的自立と子どもの健やかな成長を支える上で非常に重要です。取り決めを行うだけでなく、その内容を公正証書などの「債務名義」として作成することが強く推奨されています。債務名義があることで、万が一養育費の支払いが滞った場合でも、強制執行などの法的手続きを円滑に進めることが可能になります。
債務名義とは?
裁判所や公証役場が発行する、法的に「お金を支払う義務がある」と認められた書面のことです。これがあると、裁判をせずに給料や預金の差し押さえ(強制執行)を行うことができます。
多くの自治体では、養育費の取り決めに係る費用(公正証書作成手数料、調停・訴訟費用、戸籍謄本等書類取得費用、郵送費、弁護士相談・立会い費用など)に対する補助金を提供しています。例えば、以下のような支援があります。
- 公正証書作成費用補助: 公証人手数料、収入印紙代、戸籍謄本等取得費用、郵便切手代などが補助対象となり、上限は3万円から15万円程度まで様々です。
- 養育費保証契約費用補助: 養育費の未払いに備え、保証会社と養育費保証契約を締結する際の初回保証料が補助される制度もあり、上限は5万円程度が一般的です。
- 強制執行申立費用補助: 未払い養育費の回収のため、裁判所への強制執行申立費用や弁護士費用が補助される場合もあります。
- ADR(裁判外紛争解決手続)利用支援: 弁護士会や認証ADR事業者が実施するADRの利用料が助成されることもあります。
ADRとは?
裁判をしなくても、弁護士などの第三者が間に入って解決を目指す制度です。時間や費用を抑えて解決できる場合があります。
多くの自治体で、離婚を考えている方や離婚協議中の方、ひとり親家庭の親を対象とした弁護士による無料法律相談が提供されています。これらの相談は、養育費の取り決めや強制執行、DV、親権など、離婚に関わる様々な法律問題に対応しています。
③子どもの親権・扶養の手続き
離婚時には、親権をどちらが持つかを協議・合意し、離婚届に記載する必要があります。
- 子どもが未成年の場合、親権者の指定は必須
- 監護権(実際に育てる人)との違いにも注意
- 扶養控除・児童手当・児童扶養手当は、実際に養育している親に適用
💡税金や手当の申請に影響が出るため、役所や税務署への申告も忘れずに。
④各種名義変更(保険、銀行、学校など)
姓が変わる、扶養が外れるなどの理由で、以下の名義変更・届け出が必要になることがあります。
変更が必要な項目 | 具体例 |
---|---|
健康保険 | 会社の扶養→国保へ切替 or 自分の扶養へ |
銀行口座 | 姓の変更/児童手当の振込先 |
学校・保育園 | 保護者氏名の変更、緊急連絡先の見直し |
携帯・公共料金 | 契約者名義、住所変更など |
⑤児童扶養手当の申請と証明書の取得
児童扶養手当は、子どもを育てるひとり親に支給される手当です。受給するためには役所での申請が必要です。申請が認められると「児童扶養手当証書」が交付され、これが他の支援制度の申請時に“ひとり親である証明”として使えるようになります。
未婚・死別でひとり親になる場合のポイント
ひとり親になる理由は離婚だけではありません。未婚の母や父、死別によってひとり親になる場合も、様々な支援制度の対象となります。
● 未婚で出産する場合
未婚のまま子どもを出産する場合、次の点に注意が必要です:
- 認知の有無で、児童扶養手当や戸籍上の父親記載が変わる
- 父親が認知しない場合、養育費請求や戸籍記載ができないことも
- 認知の手続きは「出生前」「出生後」のどちらでも可能
➡ 未婚でひとり親になる場合、子どもの認知手続きが重要となることが指摘されています。
認知してもらうことで、養育費の請求や相続の権利が認められることになります。
認知の有無が、児童扶養手当をはじめとする各種手当の支給要件に影響を与える可能性があります。
死別であっても対象になる制度がある
死別によりひとり親になった場合も、悲しみを乗り越えるためのグリーフケア(悲しみに寄り添った支援)の必要性が示されています。また、多くの法律相談や養育費に関する支援は、「ひとり親家庭の父母及び寡婦(夫と死別した女性)を対象」としており, 死別によってもこれらの制度を利用できることが示されています。例えば、養育費の取り決めや確保のための相談、公正証書作成費用の補助、養育費保証契約費用補助などが対象となる場合があります。
- 所得に応じて、ひとり親控除や住民税非課税の対象に
- 「寡婦控除」が使えるケースもあり
- DVや自死の場合でも、証明書類が整えば支援対象になることがあります
出産前・出産直後に忘れやすい制度
出産は、ひとり親となる可能性のある重要なタイミングです。特に未婚の母となる場合、出産前後の手続きを事前に確認しておくことが大切です。
出産育児一時金
健康保険から支給される出産費用の補助(最大50万円程度)。
勤務先の健康保険 or 国民健康保険から申請できます。
出産手当金(会社員・産休取得者)
産休中に給与が支給されない場合、健康保険から出産前後98日間分の手当金が支給されます。
ただし、国民健康保険では対象外です。
児童手当の申請
出産後、出生届の提出と同時に「児童手当」の申請も行うとスムーズです。
申請が遅れると、支給が遅れる可能性もあるため注意が必要です。
国民健康保険への切替と減免申請
会社の健康保険から外れた場合は、14日以内に国民健康保険への加入手続きが必要です。
同時に、児童扶養手当を受けていれば保険料の減免申請も可能です。
※制度の詳細は自治体によって異なる場合があります。最新の情報は市区町村の窓口やこども家庭庁にてご確認ください。
まとめチェックリスト
ひとり親になる前後にやるべき主な準備と、それに関連する支援制度のチェックリストです。
- 離婚時にやるべきこと
- 養育費の取り決め: 離婚後だけでなく、離婚前からの取り決めを検討しましょう。
- 公正証書等の作成(債務名義化): 養育費の支払い確保のために最も重要なステップです。多くの自治体で費用補助があります。
- 養育費保証契約の検討: 未払いに備える手段として、初回保証料の補助がある自治体が多いです。
- 弁護士による無料法律相談の活用: 離婚、養育費、面会交流、親権、慰謝料、財産分与など、様々な法律問題について専門家のアドバイスを受けられます。
- その他:DV相談、住居支援、就労支援などもこども家庭庁を通じて提供されています。
- 未婚・死別でひとり親になる場合のポイント
- 子どもの認知手続き: 未婚の場合は、児童扶養手当の支給に影響する可能性があるため確認しましょう。
- 悲しみへの支援(グリーフケア)の利用: 死別の場合は、心理的なサポートも重要です。
- ひとり親家庭向け支援制度の確認: 離婚の場合と同様に、多くの支援制度(養育費確保支援、就労支援など)が未婚や死別の方も対象となります。
- 出産前後で確認すべき制度
- 児童扶養手当: ひとり親家庭の経済的支援の柱の一つです。
- 乳幼児医療費助成制度: 子どもの医療費負担を軽減する制度です。
- 幼児教育の無償化、大学進学支援: 教育費に関する支援も活用しましょう。
- 地域の子育て支援: 子育てに関する相談や情報提供、地域の支援センターとの連携も利用できます。
これらの支援制度の詳細は、こども家庭庁のウェブサイトや電話で確認できます。
📌こども家庭庁の公式サイトはこちら
https://www.cfa.go.jp/top