目次

2025年5月21日、江藤拓農林水産大臣が発言問題をきっかけに辞任を表明し、後任として小泉進次郎氏が任命されることが発表されました。この人事については一部メディアや識者から「自民党には他に人材がいないのか」といった批判も見られましたが、農政における小泉氏の過去の実績を踏まえると、改革の可能性を感じさせる人事でもあります。
小泉氏はこれまでに自民党の農林部会長を2期務め、農業政策に関する知見を深めてきました。特に農協改革や法人参入のあり方について問題意識を持ち、現場を回って課題を直視してきた実績があります。農業政策に対して具体的な改革案を持つ数少ない政治家の一人とも言えます。
日本農業が抱える構造的な問題
✅戦後の農地解放とその影響
戦後のGHQによる農地改革は、地主から小作人への土地分配を通じて自作農を増やすことを目的としたもので、日本の農業民主化に貢献しました。しかし、結果として小規模農家が中心となり、農業の大規模化や効率化が困難な構造を生んだのも事実です。この点においては、改革の副作用と捉えることもできます。
✅法人参入の規制と非効率な構造
農地法による規制で、株式会社などの一般法人が農地を自由に所有・経営することは制限されています。これにより、大規模な農業経営が阻まれ、生産性の向上が妨げられている側面があります。こうした制度的障壁の見直しは、農業改革の一丁目一番地といえるでしょう。
農協(JA)と補助金制度の歪み
✅農業資材コストの異常な高さ
肥料、農機具、資料といった農業資材の多くが農協経由で販売されており、その価格は海外と比較して約2倍とも言われます。全農が市場を寡占している構造も一因であり、農家の経営を圧迫する要因となっています。
✅JAの多角経営と独占構造
JAは協同組合でありながら、銀行(JAバンク)、保険(JA共済)、流通(農機販売など)を一体で運営しており、実質的には総合商社的な役割も担っています。独占禁止法の適用除外を受けており、市場競争原理が働きにくい構造となっています。これが農業資材の価格高騰や、農業改革の遅れにつながっていると指摘されています。
※補足:JAが独禁法の対象外となるのは協同組合に対する共同行為の例外規定によるもの。これは農家保護の理念に基づいた制度設計であり、必ずしも悪ではありません。ただし、過度な既得権益化が問題視されています。
小泉氏が目指す「農政改革」の方向性
✅農業の株式会社参入促進と土地集約
現在、高齢化により多くの農家が引退の時期を迎えています。これに伴い、農地の集約が可能となり、大規模経営への移行チャンスが生まれています。株式会社の参入を促すことで、資本を投入しやすくし、経営効率を高めることが可能です。
✅補助金の直接給付への転換
現在の農業支援は、一部で市場価格を人為的に維持する形が残っていますが、今後は欧米諸国のように「直接支払い」型に移行する必要があります。これにより、補助金の使途を明確にし、競争力のある農業構造を作ることが期待されます。
小泉氏が改革を実行できる理由とは?
💡選挙区事情と忖度のなさ
日本の多くの選挙区では農家が有権者として一定数存在し、政治家は農協などの影響を受けやすい構造にあります。しかし、小泉氏は選挙基盤が都市型であり、農業団体の票に頼らないため、改革に対して比較的自由な立場にあります。これは農業改革を進める上で大きな利点です。
締めくくり:農政改革の正念場、小泉新農水相に期待
農業は日本の基幹産業であり、食料安全保障や地域経済と密接に関係しています。制度疲労が進む中で、小泉進次郎氏のように問題意識と実行力を持つ政治家が農政の舵を握ることには大きな意義があります。今回の人事をきっかけに、日本の農業が持続可能で競争力のある産業へと転換することが期待されます。