ピケティの法則

1. ピケティの法則とは?

 ピケティの法則は、経済学者トマ・ピケティがその著書『21世紀の資本』で提唱した理論です。この法則は、「資本収益率 (r) が経済成長率 (g) を上回る場合、富の集中と経済格差が拡大する」 という基本的な関係を示しています。

ピケティによれば、歴史的に資本収益率 (r) は常に経済成長率 (g) を上回る傾向があり、これが富の不平等を生む原因とされています。


2. 具体例で考えるピケティの法則

ピケティの研究によると、以下の理由から資本収益率と経済成長率には差が生じることがわかっています。

資本収益率 (r) = 5%
 資本収益率とは、資産(株式、不動産、企業利益など)が生み出す収益の割合を指します。歴史的に、富裕層が所有する資産は安定的に高い収益を上げる傾向があります。例えば、不動産の家賃収入や株式の配当、企業利益の成長率が該当します。過去のデータを分析すると、特に富裕層の資産は年平均で約4~5%の収益を生み出していることがわかります。

経済成長率 (g) = 2%
 経済成長率は、GDP(国内総生産)や労働者の賃金の増加率を指します。産業革命以降、先進国の経済成長率は平均して約1.5~2%程度にとどまっています。これは人口増加率や技術進歩のペースに依存しているためです。したがって、「資本収益率 (r) > 経済成長率 (g)」 の構造的な差が、富の偏在を生む原因となっているのです。

 この場合、資本を持つ人々(資産家)はその収益を年5%で増やすことができる一方で、経済全体の成長(賃金の上昇を含む)は年2%にとどまります。この差が広がり続けることで、資産を持つ人と持たない人の間で格差が拡大していきます。


3. ピケティの法則を視覚化

以下のグラフで「資本収益率 (r) と経済成長率 (g) の差」を示します。この図では、富裕層が持つ資産がどれほど速く増えるかを視覚的に理解できます。

黄色線: 資本収益率 (r = 5%)

オレンジ破線: 経済成長率 (g = 2%)

資本収益率 (r) が経済成長率 (g) を上回ることが、富の格差拡大の主因となります。


4. ピケティの提案:格差を縮小するには?

ピケティは、格差を是正するための方法として以下を提案しています:

  1. グローバルな累進課税制度の導入
  2. 富裕層への適切な資産課税
  3. 公共サービスへの積極的な投資

これらの提案は議論を巻き起こしましたが、経済的不平等への具体的な対策として注目されています。


5. まとめ

 ピケティの法則は、資本主義経済の構造的な問題を指摘し、経済格差の原因を明らかにする重要な理論です。この知識を持つことで、私たちの社会や経済の仕組みをより深く理解することができます。

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