デジタル赤字の定義とは?
「デジタル赤字」とは、ある国が海外から購入するデジタル関連のサービスや製品の支払い額が、自国からの輸出額を上回ってしまい、国際収支上マイナスになる状態を指します。
特に、クラウドサービスや動画配信、広告配信システムなどにおいて、米国の大手IT企業が提供するサービスの利用が多い国ほど、この赤字に陥りやすい傾向があります。
デジタル赤字が生まれる背景
デジタル赤字の大きな要因は、海外に依存したITサービスの利用です。たとえば以下のようなサービスが挙げられます:
- オペレーティングシステム(OS)などのソフトウェア
- クラウドコンピューティング
- 動画・ゲームのサブスクリプション
- ウェブ広告の取引プラットフォーム
- IT戦略やデータ利活用に関するコンサルティング
- 著作物の利用やライセンス料
これらの分野では、GAFAMに代表されるアメリカの大手IT企業が世界市場をリードしています。一方、日本の企業はこれらの分野で後塵を拝しており、国内需要を海外企業のサービスで賄っている状況が続いています。
※Google、Apple、Facebook(現Meta Platforms, Inc.)、Amazon、Microsoft Netflix Adobe 等があります。
日本のデジタル赤字の実態と国際比較
三菱総合研究所の試算によると、2023年の日本のデジタル赤字は約5.5兆円に達しました。これは、デジタル関連取引全体で見た支出超過の額を意味します。
さらに、2022年の**世界144カ国の中で、日本の赤字額は最下位(144位)**という結果でした:
ランキング | 国名 | デジタル収支(2022年) |
---|---|---|
1位 | アイルランド | +1726億ドル |
2位 | インド | +1648億ドル |
3位 | アメリカ | +893億ドル |
142位 | スイス | ▲128億ドル |
143位 | ドイツ | ▲198億ドル |
144位 | 日本 | ▲245億ドル |
このように、日本は圧倒的な輸入超過状態にあることがわかります。
デジタル投資の拡大と赤字の今後
近年、日本企業もデジタル戦略に本格的に取り組み始めており、生成AIやクラウド基盤への投資も加速しています。
しかし、国内での技術開発が追いつかない限り、こうした投資の多くが国外のサービス利用につながり、結果的にデジタル赤字はさらに拡大する可能性が高いと見られています。
まとめ|成長の裏にある構造課題としてのデジタル赤字
「デジタル化が進む=経済成長」には違いありませんが、その恩恵が国外企業への依存を通じて流出するリスクがデジタル赤字です。
この赤字を解消するためには:
- 国産ITサービスの競争力強化
- 国内デジタル企業の育成・支援
- 国際競争を見据えた技術革新への集中投資
など、構造的な対策が急務です。
今後の経済政策や企業戦略において、「デジタル赤字をいかに減らすか」は重要な視点となるでしょう。