日本の1人あたり名目GDPが韓国に抜かれる、深刻な課題が浮き彫りに

 内閣府が発表した2023年の国民経済計算によると、日本の1人あたり名目GDPが韓国に初めて逆転され、国際的な経済地位の低下が明らかになりました。2023年の日本の1人あたり名目GDPは3万3849ドルで、前年の3万4112ドルから減少。これに対し、韓国は3万5563ドルと日本を上回り、比較可能な1980年以降で初の逆転劇となりました。経済協力開発機構(OECD)の38加盟国中、日本は22位に後退し、主要7カ国(G7)の中でも2年連続で最下位となりました。

この結果の背景には、為替レートの影響や労働生産性の低さが挙げられます。内閣府の試算では、2023年の為替レートは1ドル=140.5円で計算され、円安が名目GDPを押し下げる一因となっています。さらに、労働生産性においても、日本はOECD加盟国中29位と下位に位置しており、デジタルトランスフォーメーション(DX)やリスキリングの遅れが課題とされています。


(出所)内閣府OECD

高齢化社会と経済の停滞、日本の稼ぐ力の転落

 日本の経済成長を阻むもう一つの要因は、急速な高齢化です。現在、日本の総人口に占める65歳以上の割合は29.3%と過去最高であり、世界でも最も高い水準にあります。すでに日本の世帯の半数以上が65歳以上の高齢者を含む世帯であり、バブル世代が一斉に60歳以上になる今後5年間で、この傾向はさらに加速する見通しです。

特に問題視されるのが、高齢者が働き続ける環境の整備が不十分である点です。現在の制度では、年金受給者が働き続けた場合、年収や月収が一定の壁を超えると、その超過分が年金から差し引かれる仕組みになっています。この「月収の壁」により、健康で労働意欲のある高齢者が引退を余儀なくされるケースが増えています。この問題に対し、研究者らは、「高齢者が働ける環境の整備を進めなければ、家計所得の向上にはつながらない」と警鐘を鳴らしています。


今後の課題と展望

日本が国際競争力を回復し、経済の停滞から脱却するためには、労働生産性向上に向けたDXやリスキリングの推進が急務です。また、高齢化社会を見据えた制度改革が不可欠であり、高齢者が引退後も働ける柔軟な環境を整備する必要があります。賃上げや働き方改革を企業努力だけに頼るのではなく、政府が積極的に制度設計を見直し、高齢者を含む多様な労働力を活用することが重要です。

これらの課題に適切に対応できるか否かが、日本経済の未来を左右する分岐点となるでしょう。

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